2006年3月12日日曜日

鬼ニモ邪ニモナリマスル。

知人に紹介され「にほんの絵解きサミット」という
明治大学リバティ・アカデミーの公開講座へ。

13:00開会18:00閉会という長丁場だったけど、
企画、立案者でもある林雅彦教授の司会進行とレクチャーは
自分の興味と好奇心を異なる側面からみる機会を得たのと
今後の進展に多く興味を持たせるに足るもので、
長時間であっても睡魔におそわれることなく、楽しませていただけました。

後半に行われた絵解き口演は、現役で絵解きをされているご住職や、
継承が失われていたものを見事に復活させたものまで
最後まで興味深いもの。
中でも天音山道成寺の「道成寺縁起」は道成寺副住職の口演。
「安珍清姫」の絵巻物による絵解説法。
大げさな抑揚が無いようで無機質さは一切感じられない独特な語り方で
分かりやすく興味をどんどん惹き付ける。
そもそも絵解きとは、伝承の目的をその場に迎えるオーディエンスのレベルに
合わせて理解しやすいように語り口を変えて行う物だそう。
年間何千回も繰り返されているマンネリになりがちな説法でも、
単なるお伽話ではなく、穏やかな話方でこれだけ関心を惹かせる技は人の器を感じました。
おそるべし。お山の(副)ご住職。
小野俊成氏の説法。是非今一度お山へ伺いあやかりたいものです。
和歌山か・・・彼の人遠いなー。

と、安珍という旅の僧を清姫が焦がれた一心で追って行き、
とうとう大蛇ともみまごう程のあられもない姿に成り果てて尚恋しい人を
追いひたすら走りつづけるという、
文楽を経て歌舞伎にも題材とされた日本の風俗史に欠かせないお話。
この身を鬼と化しても愛して止まない彼の人を絞め上げ火を放つ。
女の美しく悲しい性・・・の説法ではございません。

この、歌舞伎の演目として舞う「日高川入相花王」が
昨年、玉三郎さんの清姫役で公演された。
その公演を映画としたシネマ歌舞伎が春に再演される。

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次の機会は期待出来ないので忘れないように。

その他の口演もそれぞれ印象的な要素をもっていておもしろかった。
「善光寺如来絵伝」は、企画者林教授が途切れてしまった伝承を
復興させたもの。若い女性の方が口演を行うんだけど、
これがまた凄い。独特な調子と抑揚。よくとおる発声。
しかも長い。全29絵の4幅。有り難すぎる。
これをこの先伝承するのはかなりハードル高い。
と、思う私の日本文化への愛はまだまだうすっぺらなんだなと、
思い知らされることでした。

日本史をつくる文化風俗史、美術史、宗教史および思想学の
すこし歯がゆい個別の研究課程。
それら全てが理となって人の精神が成り立って来た事に対して
漠然とした表現を嫌うのも仕方がないのはわかるのですけど。
これらパズルがしっくり形をつくっていく前途のような企画だったこと。
とても良い経験でした。

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絵解き口演のシナリオ集と
「那智参詣曼荼羅」子比丘尼からいただいた梛の葉

http://www.kyoto.zaq.ne.jp/myomanji/