2007年2月1日木曜日

親子競演にまにあう。

到着日は非公開文化財特別公開めぐりに当てるときめていたので、
ランチの後、午後は大徳寺へ。

ここで観光バスの団体さんとかち合う。
でも団体行動なので旨くずらせば特に問題はなく。

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聚光院
親子2代で取りかかった大仕事は、
室中、檀那の間という建物の主要部となる2室を息子の永徳が、
来客がまず通される礼の間、僧侶が衣鉢を受ける事を含めた衣をかえる為の衣鉢の間を父の松栄がそれぞれの襖絵を描いている。

先の妙心寺と同様ボランティア解説員の方が礼の間から順に
各部屋に立っておられ、ころ合いをみては説明をして下さる。復習を兼ねつつ、つい割愛しがちな予備知識を聞かせて下さるのでとても参考になる。

礼の間、まずは松栄の瀟湘八景図で既に時間を取られる。
このつい最近にグッときた瀟湘八景図が近代画だったからこのギャップ感と、本来の空白使いの彼方に見るべき風光へのシンクロ感を楽しむこと、ボランティアのオジサマもさぞびっくりされたことでしょ。


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そして客人は主たる部屋、室中へ招かれます。
息子、狩野四代目(だっけ)永徳の花鳥図。
左右の両脇、梅と松の巨木は正面へ向かわすようなボリュームで、礼の間の静寂を一転させ、美しい花鳥のざわめきに圧倒される心地よさは、あー、あともう一歩、部屋の中に入れて下さい。というもどかしさと紙一重。
人など存在しなくてもすべては生きて営みをつづけている事実を突き付けられる。
ただ、人はそれを思い知り、理解する能力を持っていることに気づきまた、営みの美しさを感受する。
400年後の人間にそれを伝える彼等の純粋なるチカラに言葉無く、ただ顔を緩めっぱなしにしてるだけ。


続いて檀那の間、永徳の琴棋書画図。
主張的な濃淡にも細かな表現で奥行きの有る唐国の山楼。
1戸ずつ順に賢者たちを訪ね、最後の衣鉢の間へ。

松栄の竹虎・豹・遊猿図。
5頭の親子の猿の表情や、目線の先を追うことで彼等の会話が見えてくるよう。方やの2頭の虎と1頭の豹、実は豹はメスの虎と考えられていたらしく、つまりこちらも親子と模されているわけ。
二十歳そこそこのわが子へ重要な仕事を任せた松栄の憶いは、最後の間に父性愛を思わずにはおれない。
あの、描かれた花鳥ののびのびとした営みの音は、覆うように広げられた父の両腕があってこそだったことを改めて思う。

松栄、永徳親子の競演として観賞出来るのはこの特別公開で最後。
今後の永徳展などで、旨く計らわれることも有るかもしれないけど、本来有るべきこの方丈での公開は終了後京博へ収蔵されるため、確かに最後、というのも大げさな話ではないかと。

この抑揚感をおもうと、それぞれを分たれた形で今後は観ることになるのは少し残念だけど、冬の京都を恐れず訪れて本当に良かった。
あとは、秋の永徳展で修復された花鳥達に至近距離で再び会えるのを楽しみにしてます。


非公開文化財特別公開
大徳寺


聚光院
礼の間  瀟湘八景図    松栄
室中   花鳥図      永徳
檀那の間 琴棋書画図    永徳
衣鉢の間 竹虎・豹・遊猿図 松栄