先の東博で出展されていた蕭白の仙人図屏風のまえで若いおにーさんが、
「この波は、北斎とこの、蕭白とどちらが先に描いたんだろう」と連れの彼女に言っていた。
すごいっておもった。
先にその二人の画家のバックグラウンドを知らないで、あの屏風を見たときに、私にその発想ができただろうかと思ったら、ちょっと心が寒くなった。
たいがいのものを先に画から知って、
実物を目にしたときに、「ああ、画家はこの瞬間を目に焼き付けて描いたんだ。」
というフラッシュバックがほとんど。
葛の蔓が冷まされた風に流れるように吹かれる一瞬や
凛とした音が鳴りそうな銀の満月に気がついてきた。
今日もそれだった。
夏の積乱雲というのではないが、不安定な大気、
不気味な竜巻上の数本の雲柱の向こうに黒富士を見た。
遠雷の音と異をして光る稲妻。
本当に富士が黒く見える事ってあるんだ。
葛飾北斎
「凱風快晴」
「山下白雨」